Diary 2016. 11
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11月1日 (火)  本番は11月?

11月になり、7月15日のクーデター事件から3ヶ月半が過ぎた。非常事態宣言中とはいえ、毎日、当たり前な日常が繰り返され、街の雰囲気も平穏そのものである。

しかし、「第2のクーデターが11月に起こる」といった風説が随分前から流されていて、政治的な緊張は、まだ続いているようだ。「7月のは予行演習、本番は11月」などと物騒なことを言う人たちもいる。

11月本番説によれば、「7月の予行で、国民の激しい抵抗が解ったから、もっと大きな仕掛けを用意している」らしいが、あれ以上の仕掛けで来られたら堪ったものではないだろう。

国家の機構内に入り込んでいたギュレン教団のメンバーは、既に相当排除されているはずだから、それほどの力は、もう残っていないと信じたいところだ。

風説は、力を誇示したい教団が流しているという説もある。さもなければ、「賞味期限切れ」と見做され、アメリカは、尊師をトルコへ送還してしまうからだと言う。

尊師が送還されて、真相の究明が進めば、まるで呪いを掛けられたようになっているメンバーの中からも、目を覚ます人たちが現れるかもしれない。恐ろしい本番のシナリオではなく、こちらの仮説が実現されるように祈りたい。


*自己紹介欄のメールアドレスは既に使えなくなっているので、私(新実誠)へのお問い合わせは下記のアドレスにお願いします。↓

makoton1@hotmail.co.jp


*写真:アタシェヒル(10月29日)。右写真の正面に見えるのは、“デヴェリ”という有名なケバブ料理店。

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11月2日 (水)  死刑

(11月1日)

昨日(10月31日)、テレビの討論番組で、法律学の専門家が説明していた。法を改正しても、その法律を過去に遡及して適用することはできないから、死刑制度を復活させたところで、7月15日クーデター加担者の処刑は不可能であるという。

私は、こういった法学の基本的な事柄も良く解っていなかった。専門家は、「トルコがこれを無視して、クーデター加担者を処刑すれば、国際社会で孤立してしまうだろう」と警告している。

*(最近、トルコのニュース専門テレビ局の多くは、“YouTube”からもリアルタイムで視聴できるようになった。日本でも同様の試みがあると良いのだが・・・)

死刑復活論議がまた再燃しているのは、先日、エルドアン大統領が、何処かの式典で演説した際、死刑復活を求める聴衆の呼びかけに答えて、「その日は近づいている」などと発言した所為じゃないかと思うが、どれほど現実味のある話なのか良く解らない。

8月10日に、大統領府前で開かれた大集会では、エルドアン大統領自身も、「議会が否決すれば、私は何も出来ない。それが(民主主義を守るために)犠牲となった人たちに報いることだ」と含みを持たせた発言をしているし、ユルドゥルム首相は、死刑復活の議論から一貫して距離を置いて来ている。

それに、クーデター事件から3ヶ月以上経っているのに、未だ議会でも審議されていないのは、なんとも奇妙である。

そもそも、エルドアン氏が首相時代から繰り返して来た「中絶は殺人である」とか「避妊を禁止すべき」といった爆弾発言が、実際の法改正等に繋がった例はまずなかった。いつも、マスコミで盛り上がるだけで、うやむやのまま終わってしまう。

そのため、ああいった発言は、議題をすり変えようとする「目くらまし」じゃないのかと分析する識者もいる。

いつだったか、当時のエルドアン首相が、式典の演説で「中絶は殺人」といった爆弾発言をしたら、テレビ局のカメラは、参席していたアクダー厚生相の反応を素早く捉えていた。

アクダー厚生相は、隣の閣僚に何か耳打ちしながら、可笑しそうに笑っていたのである。多分、『うちの大将、またやってくれたよ。明日、俺のところに新聞記者が押しかけてきて大変だぜ』みたいな軽口でも叩いていたのではないかと想像する。

しかし、死刑を全廃したEUが、この死刑復活論議に反発を示すのは当然かもしれないが、死刑制度を続けている日本でも、大袈裟に報じられているのは、何故だかさっぱり解らない。

トルコはEUに準じて、2004年に死刑を全廃しているけれど、それ以前も、1984年以降、死刑が執行されたことは一度もないそうである。


*写真:カッパドキア(2011年)

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11月3日 (木)  バイクの教習場

先週、ギョズテペの地下鉄駅から外に出たら、前の広場で多くの人たちが、バイクの練習に励んでいる。訊くと、この広場は、二輪免許取得用の教習場になっていると言う。

「教習車」と表示された車も何台か停まっていたが、これはバイクの教習を受ける人たちを送迎するための車で、自動車運転の教習をここで行っているわけではないらしい。

トルコの自動車学校は、街中の雑居ビルに教室があるだけで、多くの場合、教習場までは持っていない。だから、実技の教習は、いきなり路上に出て行う。

もちろん、街外れの余り交通量がない所でやっているけれど、『大丈夫か?』というシーンも何度か見かけたことがある。最近は、いい歳したおばさんの教習生も多く、教官たちは結構ハラハラドキドキしているんじゃないかと思う。

これがバイクになると、教習生の方も、いきなり路上では不安を感じてしまうのか、いくつかの自動車学校が共同で、この二輪専用教習場を利用しているようだ。

自転車に乗る人が少ないトルコでは、自転車の経験もないバイク教習生がいるかもしれない。そんな人が直ぐ路上に出るのは、確かにちょっと無理だろう。

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11月4日 (金)  死刑論争

(11月3日)

再燃した死刑を巡る議論はなかなか冷めそうもない。今日(11月3日)のヒュリエト紙のコラムで、アブドゥルカディル・セルヴィ氏は、エルドアン大統領の発言を「ブラフではなく真剣だ」と論じていた。

セルヴィ氏の分析によると、死刑制度を復活させても、過去に遡及して、例えば、PKKの元指導者オジャラン氏を処刑することは不可能だが、フェトフッラー・ギュレン師の場合、テロ活動の継続性等々による立件も無理ではないらしい。

以前から死刑復活論者だったと思われるMHPのバフチェリ党首が、エルドアン大統領にエールを送ったため、慎重な構えを見せていたユルドゥルム首相も微妙に態度を変えてきている。

今までのこういった爆弾発言に纏わる議論の経過を振り返ってみれば、実現性は未だそれほどでもないような気もするが、なんだか良く解らない状況になってきた。

もちろん、EUからは激しい反発が予想される。そして、実際に死刑制度を復活させたら、これはEUに対する絶縁状になってしまいそうだ。

しかし、EUやNATOといった枠組みについて、疑問を提起している識者も少なくない。冷戦の産物であるNATOの存在意義など、とうに失われていると言うのである。

冷戦の時代に育ち、つい昨日までソビエトがあったように思っている私の頭では、なかなか整理がつかないけれど、確かに時代は大きく変わり、これまでの常識も徐々に通用しなくなって来ているかもしれない。果たしてどうなるだろうか?


*写真:カドゥキョイ(11月2日)

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11月5日 (土)  ケバブ食べて悶絶する日本人

(11月4日)

エキストラに駆り出されて出演したテレビドラマなどで、自分の台詞もあったりした場合は、放送後に“YouTube”から出来栄えをチェックしている。

先日のドラマでは、「トルコの美味しいケバブを、がっついて食べている内に悶絶する日本人」というのをやらされた。

前以て送られてきた台本には、「赤くなったり真っ青になったりした挙句、失神してテーブルに突っ伏す」と書かれていて、『そんな難しいこと言われても無理だよ』と思いながらも、なんとか自分なりに工夫してみることにした。

しかし、撮影当日、監督さんからはそれほど難しい注文もなく、「苦しそうな顔してから突っ伏して下さい」と言われた。さすがに監督さんも、素人に「赤くなったり真っ青になったり」させるのは無理だと思ったのだろう。

それでも、一応、工夫した通りにやってみたら、監督さん、結構喜んでくれた。主演の若い女優さんも大笑いして次の台詞が言えなくなっていた。どうやら少しは巧く行ったような気がして、放送後のチェックが楽しみになった。

さて、そのチェックしてみた結果だけれど、馬鹿々々しい雰囲気が、ある程度は出せていると思う。監督さんや台本書いた人も、こういう馬鹿々々しさを期待していたんじゃないだろうか?

私は、馬鹿々々しいことが大好きだから、こんな役だったら、いくらでもやってみたくなるが、エキストラに駆り出されたりする日本の人たちの中には、「日本人が愚弄されているような役」を嫌がる人もいる。

エキストラではなく、トルコでプロの女優として大活躍されている高野あゆみさんは、日本人に対する先入観や偏見を助長するような動作の演技を要求されても、応じなかったりするそうだ。

外国で日本を代表して活躍する人の矜持を感じてしまうけれど、応じていれば、役はもっと増えていたかもしれない。もっとも、そこまでして仕事を増やす必要なんてないのだろう。

******

以下の“YouTube”で、58:36辺りから、その悶絶場面が始まる。私の役柄は、ホテルの社長という設定で、ちょっとした奇縁により、入社したての若い女性を、カスタマーリレーションシップ・マネージャーに抜擢する。そして、彼女と夫の料理長からケバブの大接待を受ける。

ところが、ケバブを食べ過ぎたのか、社長は突然悶絶して気を失ってしまう。困り果てた若夫婦は、失神社長をこっそり裏口から連れ出して病院に運ぶが、それをライバルの女性に見られてしまう。

首を覚悟した若夫婦は、自ら身を引こうとしたけれど、失神社長、実は虫垂炎で、病院に連れて行かれたお陰で助かり、逆に感謝されるという話。(この場面は、1:23:00辺りから)

ライバルの女性を演じているのは、舞台出身の女優さんで、演技力が素晴らしい。(1:09:31〜)

ところで、2ヶ月ほど前、糸切り歯が根本から折れてしまい、歯科医院で処置してもらったものの、とてもじゃないけれどブリッジの差し歯を作ってもらうほどの経済的な余裕がない。

医師の説明によれば、放置しても、見っともないだけで、当面問題はないらしい。まあ、こういう馬鹿々々しい役柄なら、見てくれは余り考慮されていないから大丈夫だと思う。

BABA CANDIR-44(YouTube)
https://www.youtube.com/watch?v=SikKs9x4ecU

以下は、失神社長が、女性をカスタマーリレーションシップ・マネージャーに抜擢する場面。

BABA CANDIR-43(YouTube)
https://www.youtube.com/watch?v=nYePEyBYc9M

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11月6日 (日)  しつこい風邪

今流行っている風邪は、少し良くなって油断すると、またぶり返す性質のようだ。私ばかりでなく、「なかなか治らない」とこぼしている人が結構いる。

日本では、それほど寒くないこの時期に風邪をひいた場合、近くの銭湯で、のぼせるまで充分に体を温め、帰ると直ぐ布団にくるまって寝る、これだけで大分良くなったりした。

そういえば、クズルック村にいた頃も、温泉に行って温まったりしていた。明日から、クズルック村、あるいはブルサ辺りの温泉でも行って、2〜3日ゆっくりできたら言うことないけれど、もちろんそんな余裕があるわけない。

『スパイシーなアダナ・ケバブは風邪に効きそうだ』と思っても、『外食は高くつくから止めておこう』となってしまうくらいだから、温泉旅行なんてとんでもない話だ。

しかし、観光に来られるなら、秋〜冬のトルコも悪くないと思う。夏、ブルサの温泉に行ってもつまらないだろう。

まあ、今、トルコへ観光に来ようという人がいればの話だが、住んでいる者としては、平穏そのもので何の危険も感じていない。冬のトルコ温泉旅行を是非お勧めしたいくらいである。

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トルコでも、アメリカの大統領選挙は大きな話題になっている。

日本の報道を見ると、トランプ氏の追い上げが危機感をもって伝えられているけれど、トルコには、トランプ氏の勝利を期待している識者も多い。ヒラリー・クリントン氏は、ギュレン教団から多額の献金を受けて来たと思われているからだ。

また、多くの識者が、トランプ氏でもクリントン氏でも、アメリカの外交政策に極端な変化が生じることはないと論じている。いずれにせよ、トルコとしては、とにかく早期にギュレン師を送還してもらいたいところだろう。


*写真:カドゥキョイ(11月2日)

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11月7日 (月)  クルド系政党HDP

クルド系政党HDPのセラハッティン・デミルタシュ党首らが逮捕されたのは、日本でも大きく報道されたようだ。

ある識者は、今回の逮捕を、3段階に分けて進められたHDP対策の3段階目と分析している。まず、9月にHDP系の民選市長24人の解任があり、それから10月末になって、民選のディヤルバクル県知事ギュルタン・クシャナク氏が逮捕された。

当局は、これによって、地域民衆の反応を見ていたのではないかという。HDPは、既に民衆の支持を失っていると思われていたが、それでも自分たちの選んだ県知事が逮捕された場合、反発を見せる可能性もあった。

しかし、HDPが煽ったにも拘わらず、大規模な抗議活動等はなかったため、今回の逮捕に踏み切ったらしい。

昨年6月の国政選挙でHDPが躍進したのは、多くの人々が問題の政治的な解決を求めたからであり、その後、武力闘争を再開させたPKKとの関係を断とうとしなかったHDPに人々は落胆し、それは11月の再選挙にも反映されたと言われている。

また、AKP政権党を支持するクルド人によれば、ディヤルバクルなどHDPが大勝したクルディスタン地域で、デミルタシュ氏やクシャナク氏に心情的な強い親近感を懐く人は、それほどいないそうである。

デミルタシュ、クシャナクの両氏は、エラズー県の出身であり、2015年11月の選挙結果を見ると、HDPはエラズー県で、AKPは言うまでもなく、トルコ民族主義政党のMHPにも及ばず、第3党に甘んじている。

今回共に逮捕されているHDPの重鎮イドゥリス・バルケン氏の出身地ビンギョル県でも、HDPは、AKPに大差をつけられて第2党だった。やはり逮捕されたフィゲン・ユクセクダー副党首は、アダナ県の出身で、エスニック的にもクルド人ではないらしい。アダナ県でHDPは、CHPにも敗れて第4党である。

HDPが大勝したディヤルバクル県、バットマン県の出身で、AKP政権党の重鎮と言えるメフディ・エケル元農業相、メフメット・シムシェク現副首相が、クルド語を話すのに対して、上記のHDP議員らは、クルド語が殆ど話せないと言われている。(デミルタシュ氏はクルド語のザザ方言なら少し解るそうだ)

こうしてみると、HDPは果たして、ディヤルバクル等の核心的なクルディスタン地域に根差した政党だったのか、疑問に思えてしまう。

2014年に亡くなったクルド人の友人は、ディヤルバクル県の出身でクルド語を当たり前に話しながら、AKP政権を支持していた。この友人によれば、HDPの主要メンバーは、文化的にもクルディスタンの民衆からかけ離れていたという。

「ディヤルバクル県の人口の殆どは、自分のように熱心なスンニー派だが、HDPは左翼の政党であり、異様なほどアレヴィー派が多い。あれでどうやってディヤルバクル県で票を得ているのか不思議なくらいだ」と亡き友人は語っていた。

その時、友人がアレヴィー派として名を挙げていたHDPの主要メンバーは、アイセル・トゥールック氏(エラズー県出身)とセバハット・テュンジェル氏(マラティヤ県出身:マラティヤ県でHDPは第4党)だった。

トゥールック氏と同じくエラズー県の出身であるデミルタシュ氏とクシャナク氏にも、「アレヴィー派ではないのか?」という声が聞かれる。(ちなみに、PKKの最高幹部ジェミル・バユック氏もエラズー県の出身)

いずれにせよ、HDPやPKKが扇動してきた所謂“クルド問題”は、純粋な民族の問題とは言い難いような気がしてくる。


*アレヴィー派の問題について、エティエン・マフチュプヤン氏は、「アレヴィー派問題などというものはない。あるのは彼らを受け入れようとしないスンニー派の問題だ」と述べていた。↓

2016年5月30日(月)ビナリ・ユルドゥルム新首相
http://www.neo-pro.jp/makoto/tayori/diary/diary.cgi?mode=read&page=10&y=2016&m=5


2015年11月9日(月)亡くなったクルド人の友人
http://www.neo-pro.jp/makoto/tayori/diary/diary.cgi?mode=read&y=2015&m=11

2016年1月19日(火)政治的解決か、軍事的解決か?
http://www.neo-pro.jp/makoto/tayori/diary/diary.cgi?mode=read&page=10&y=2016&m=1

2014年7月19日(土)大統領候補のセラハッティン・デミルタシュ氏
http://www.neo-pro.jp/makoto/tayori/diary/diary.cgi?mode=read&page=10&y=2014&m=7

2016年2月3日(水)歴史の闇
http://www.neo-pro.jp/makoto/tayori/diary/diary.cgi?mode=read&y=2016&m=2


*写真:カドゥキョイ(11月2日)

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11月8日 (火)  MHP:民族主義者行動党

HDPのデミルタシュ党首らの逮捕は、8割近くの国民が賛同したそうである。AKPとMHPは言うまでもなく、党首のクルチダルオウル氏が反対を表明している左派CHPの支持基盤にも、どうやら賛同者はいるらしい。

しかし、知識人らの反応を見ると、従来AKP政権を支持してきた識者の中からも、反対の声は高まっているようだ。

HDPは、西欧にも拠点を持っているため、党首らの逮捕は、こちらでの活動を強化しかねないと多くの識者が懸念している。そもそも西欧は、この逮捕をきっかけに、早くもトルコへの非難攻勢を強めているという。

この「HDP〜PKK」ばかりでなく、ギュレン教団も欧米に支援者がいるのだから、トルコがこれらのテロ組織を制圧して行くのは、おそらく生易しいことではない。

だからと言って、トルコは経済的にも欧米との関係をこれ以上悪化させるわけにもいかないだろう。あの「死刑制度復活」も、国民の不満をそらす、あるいはブラフとして使っているような気がする。また、そう信じたいところである。

とはいえ、最近、テロ対策や死刑復活論争を通して、右派MHP(民族主義者行動党)が非常に存在感を増している。

例えば、ギュレン教団の排除を進めるうえでも、MHPのバフチェリ党首は、エルドアン大統領にとって、かなり信頼のおけるパートナーとなり得るかもしれない。AKP党内にも未だギュレン教団のシンパが残っていると思われているからだ。

MHPは、軍部や司法にも、少なからず影響力を持っていると言われ、なかなか頼りになるらしい。しかし、もしもMHPと組んだりしたら、エルドアン大統領とAKPは、かつての中道右派と余り変わらない雰囲気になってしまいそうである。


*写真:
トルコ民族主義を掲げるMHPは、伝説の中で民族の始祖とされている“灰色の狼”をシンボルにしている。
支持者らは、狼の頭を模して、親指と中指薬指を合わせて突き出し、人差し指と小指を立てた手を掲げたりする。
その狼の頭を模した手を掲げるバフチェリ党首。

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11月9日 (水)  MHPとAKP

MHPは、1960年軍事クーデターの首謀者の一人だったアルパスラン・テュルケシュ元陸軍大佐によって、1969年に成立している。

シンボルとなっている伝説上のトルコ民族の始祖“灰色の狼”は、モンゴルの“蒼き狼”の伝説を思わせるが、“灰色の狼”の故地エルゲネコンも、中央アジア・モンゴル高原の辺りだとされているらしい。

しかし、現在、MHP支持者のどのくらいが、自分たちのエスニック的なルーツはモンゴル高原と信じているのか、その辺のところは何とも良く解らない。

クズルック村にもMHP支持者はかなりいたけれど、彼らの中には、祖父母の世代が未だチェルケス語やグルジア語を話していたりして、そのルーツが明らかだった例も少なくなかった。

なにしろ、母語としてクルド語を話しながら、MHPを支持する人もいるのである。全ては“伝説”と承知して、彼らのエスニック的なルーツには余り拘らない方が良いかもしれない。“トルコ人”のルーツは、その多くが、5〜6世代先までしか遡れないのではないかと言われている。

このMHPとAKP政権の支持基盤は、もともと非常に似通っていたそうである。「似通っているんじゃなくて、ほぼ同じだ」とまで言う人もいる。昨年には、MHPの創業者であるアルパスラン・テュルケシュ氏の子息トゥールル・テュルケシュ氏が、AKPへ移籍して話題になっていた。

AKPは、一時期、「グローバルなイスラム主義の政党」などと思われたりしていたが、それは当初、ギュレン教団と協力関係にあったからであるような気もする。

AKPの母体となった“ミッリ・ギョルシュ(国民の思想)”は、“ミッリ(国民の)”と謳っているだけあって、もともと民族主義的な傾向も備えていたらしい。そのためか、“ミッリ・ギョルシュ”を率いていたネジメッティン・エルバカン師は、ギュレン教団を「アメリカの手先」と罵って、徹底的に嫌っていたという。

先月だったか、反エルドアンの急先鋒と目されているCHPのギュルセル・テキン氏が、「イスタンブール市長時代、エルドアンはギュレン教団に便宜を図ろうとしなかった」と明らかにして、珍しくエルドアン氏を評価していたけれど、当時のエルドアン氏は、エルバカン師の愛弟子と言える存在だったのではないだろうか?

その後、エルバカン師と袂を分かって、AKPを立ち上げ、ギュレン教団と協力関係に入ってからも、エルドアン氏が教団を警戒し続けていたとしても不思議ではない。今思えば、ギュレン教団の友人たちの間で、エルドアン氏の評判は、当初より芳しくなかった。

7月15日のクーデター事件後に、エルドアン大統領は、「2012年以来、私は一人でギュレン・テロ組織と戦ってきたかのようだ」と不満を漏らしていたが、どうやらそれまでは、AKP党内からも思ったほどの協力を得られていなかったらしい。

さすがに眉唾じゃないかと思うが、「AKPは未だ時限爆弾を抱えている」などと警告する識者もいる。“大統領制”といった重要な評決を議会で行う際、AKP党内の隠れギュレン派が反対票を投じて、その時限爆弾を炸裂させるというのである。

ギュレン教団対策の要である内務相に、外様のスレイマン・ソイル氏が起用されたのは、エルドアン大統領の指示に基づくものだと囁かれているけれど、ギュレン教団の問題では、エルドアン大統領が元々の同志よりも、ソイル内務相、あるいはMHPのバフチェリ党首を信頼しているとしても、それがまるで有り得ない仮説とは言い切れないかもしれない。


2015年11月2日(月)選挙の結果
http://www.neo-pro.jp/makoto/tayori/diary/diary.cgi?mode=read&y=2015&m=11



11月10日 (木)  アメリカの大統領選挙

トルコには、ニュース・時事専門のチャンネルがいくつもあり、中には“YouTube”からリアルタイムで視聴できるところもある。

アメリカの大統領選挙に関しては、各チャンネルが特番を組んで、スタジオに外交問題等の専門家を招き、昨日(11月8日)、投票前の状況から論評を始めると、今朝(11月9日)も開票速報を兼ねて、引き続き、今後の展開などを分析していた。

投票前の論評では、多くの専門家が「両候補拮抗」として、どちらが勝つのか明言を避けながら、トランプ氏が勝った場合も、それほど極端な外交政策の変更はないと見ているようだった。

一部に、多額の献金を受けていたとされるクリントン氏は、フェトフッラー・ギュレン師の送還に応じそうもないが、トランプ氏なら期待できるという声も聞かれていたけれど、ある識者はそのいずれも否定していた。

クリントン氏が、献金で政策を変えることはないし、トランプ氏だから送還に応じるといったこともないだろう、という見解だった。

一般的には、エルドアン大統領の支持者に、トランプ氏へ期待を寄せる人が多く、反エルドアンの左派が少なからずクリントン氏を応援していたような気がする。

選挙は、結局のところ、トランプ氏が勝利を収めているものの、果たして今後の展開はどうなるだろうか?


*写真:ウスキュダル(11月4日)

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