【228】CHPに期待しなければならないこと【ラディカル紙】【2010.05.28】

5月27日付けのラディカル紙より、前回と同じくヌライ・メルト氏のコラムを訳してみました。

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AKP(公正発展党)は、ある可能性をかなり失ってしまった。今や明らかにCHP(共和人民党)の出番である。何故なら、トルコにおいて、政局が危機に陥るのは、党の構造であるとか伝統、あるいは人物によって説明できるものではない。トルコと世界の社会的/政治的なプロセスを出来る限り良く読み解けるならば、政治的な危機を脱する希望が生まれる。さもなければ、もっと激しくのた打ち回り続けるだろう。

私が何を言いたいのか、ここで短く明らかにしてみたい。少なくとも、この長大な問題へ一つの足掛かりを作ってみよう。

まず、CHPが、“体制の番卒”から“社会民主主義”あるいは“左派”のラインに立ち返ることを期待したり、希望をこれの実現に結びつけたりするのでは、間違いとは言えないまでも、状況の読み込みが全く足りていない。

AKPが、左派の放棄したエリアに入り込んで貧困層の票を集め、ただここから力を得たと考えて、この流れがCHPに戻ることを期待するのであれば、これは明白な間違いである。

AKPは、単に社会民主主義の代わりに“喜捨”を使い、社会正義の名においてポピュリズム的な言動によって、貧困層の票を集めたわけではない。イスラム/右派のイデオロギー的な言動により保守的な層を従えたのである、ジハン・トゥアルは、スルタンベイリ区を例にして、この問題について、目から鱗が落ちるようなことを言っている。この本は未だトルコ語に翻訳されていないが、可能性のある方は直ぐに読んでもらいたい。

トルコにおける実際の争点は、頻繁に取り沙汰されている“失業−貧困”ではない。それは、失業、貧困、不正の彼方で、深い亀裂が造り上げた緊張によって明らかにされるのである。この亀裂の一方は、保守/政教分離を軸とし、もう一方は、国民国家/クルド政策のところで姿を現した。この亀裂の修復に留意しない政治的な言動や政党は、政治的な危機を乗り越えるために大きく貢献することは出来ない。

AKPは、イスラム主義から保守的な民主主義へ移行する過程で、一方で積もり積もった社会不正の問題に目をつぶり、もう一方で民主主義から権威主義へ進んでしまったため、政治的な危機を深刻化させた。これにより、硬直した政教分離と統一不可分の国家の理解によって定義された公式イデオロギーを、民主的な方向へ柔軟化させる可能性を失い始めた。

これに対してCHPは、公式イデオロギーをあらゆる質疑から遠ざけることによって、政治的なラインを鮮明にしようと頑張った。だから、共和国のイデオロギーを民主的に柔軟化させる課題に取り組まず、社会民主主義的な言動をそこから逃れるための言い訳にするCHPの変化は、それほど対価を得られないだろう。

さらに、CHPがODP(自由民主主義党)のようになることを期待したり、政治的な危機からの脱却を、この可能性に結びつけたりするのは馬鹿げている。

保守層が、以前より右派の政党を、単に貧困や社会問題から支持して来たのではなかったとしたら、保守的な圧力を不快に感じている人々もCHPを、単に“左派”のラインに戻ったからと言って支持することはないだろう。但し、このイデオロギー的な選択の明示を、“悪い”とか“間違った”政治的な態度であると評価して軽んじるべきではない。

誰が何と言おうと、保守的な層が、共和国および政教分離とある程度和解できたのは、右派の政党、そして最後にAKPを通してだった。

こうして見た場合、AKPが緊張を解きほぐす課題において行き詰った時点で、仕事はCHPに回って来るのである。共和国と政教分離の保守層との和解は、似たような形でCHPを通して成されるべきだ。

CHPとその支持層は、彼らが危機にさらされていると考えている“共和国建国の原則”を守る道は、この原則が社会的な和解を実現させる方向で新たに解釈されて可能になることを理解しなければならない。

クルド政治についても同様に評価することが可能だ。あらゆる問題にも拘わらず、BDP(平和民主党)には、クルド人の政治的な活動を民主的/合法的な枠組みへ移行させるために、重要な働きがあり、BDPが緊張を解きほぐす課題において、巧く行かない、あるいは不充分である場合、CHPはこれを引き受ける立場にある。

トルコの政治は全てCHPにインデックスされなければならないとか、皆が自分の考えをひとまず置いて、希望を変化したCHPに託して支持しなければならないとか、そんなことは言わない。ただ、トルコが政治的な危機を乗り越えて、民主的な政治、あるいは民主的な議論の扉を開くために、“変化”を主張して動き始めたCHPが背負っている責任について申し上げている。

政治に生じている重大な緊張と空白を示し、CHPに対して、この空白を埋める意志と能力がどのくらいあるかによって、その対価を得ることができるだろうと申し上げたいのである。

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原文
http://www.radikal.com.tr/Default.aspx?aType=RadikalYazarYazisi&ArticleID=999108&Yazar=NURAY MERT&Date=28.05.2010&CategoryID=98

Cihan Tugal / Passive Revolution, Stanford University Press, 2009
http://www.sup.org/book.cgi?id=9252

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