【222】文民による圧政【ラディカル紙】【2009.11.18】

11月17日付けのラディカル紙より、ヌライ・メルト氏のコラム。軍の中に存在していたと言われ、政治介入を企てようとしていたとされる秘密組織“エルゲネコン”への調査が進む中、メルト氏は、軍ではなく、文民による圧政の危険を論じています。

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英国労働党の国会議員へレナ・ケネディは、公共利益の為に“自由”の領域が狭められていると、自分の党の政策を一部批判した論説を書いた。その中で、「圧政、専横は、必ずしも制服組によってもたらされない。アルマーニのスーツを着た人々によってもたらされるかもしれない。その危険に直面している」と述べている。

しかも、この時点では、“911”後に、“テロ”を理由に施行された自由を制限する法など未だ話題になっていなかったのである。(2001年7月5日−The Guardian)

我々の専横体制が、アルマーニを着ているのか、他のブランドを着ているのか、それは知らない。しかし、制服組無しの専横へ向かってエンジン全開で突き進んでいることに疑いの余地は全くない。

権威主義的な各体制が掲げる“敵”“脅威”“危険”は、それぞれに異なっているが、これに対するやり方は非常に似通ったものだ。“敵”“脅威”“危険”に対しては、何をやっても許されるのである。誰もが嫌疑がかけられ、いつ何時、罪に問われ、汚名を着せられてしまうのか解らなくなってしまう。

ケネディは、自分の政権党へ、これについて“新たに考えるよう”呼びかけている。私も、現政権とこれを支援する人々へ、彼らの意志が純粋ならば、“新たに考えるよう”呼びかけたい。

イスタンブール検察庁の検事長が、“エルゲネコン事件の容疑者との関係を明らかにする”目的で盗聴されていた事実により、これは新たに話題となっている。私は、これを絶えず話題にして行かなければならないと思う。

現状で、“エルゲネコン訴訟”は、大きな監察体制の口実として、弾圧の手段に使われている。まるで“2:28軍事介入のプロセスは1000年続く”と唱えていた者たちと同じように、このプロセスでも、1000年続く強権への野望が問題なのである。

そして、これについて少しでも疑念を抱けば、汚名を着せられるのは時間の問題だろう。貴方がエルゲネコン組織と無関係であることが明白ならば、“支援していた”という理由で、それが無理ならば、“この組織をことさら軽くみようとしている”あるいは“論点をぼかそうとしている”という理由、即ち“援護と幇助”で告訴されてしまう。私に対してはないが、多くの人たちが我が身を疑っている。

あらゆる権威主義的、全体主義的な体制の時代は、このようなものである。聞く耳は持たず、一方的に聞かせようとする。何か言おうとした者に対しては、生まれたことを後悔させるようにする。何処かの片隅へ追い込み、息ができないような状況へ封じ込めるまで放っておかない。権力をちらつかせて脅かし、他の例を見せて震え上がらせる。

こういった体制には、代弁者や、もっと悪いことに扇動者が沢山現れてしまう。かつての恐れを知らない民族主義者、2:28軍事介入の称賛者たちが、新しい時代の裁定者として、我々の前に姿を見せるかもしれない。

政権は、いつも野心を抱く。絶対的な政権ともなれば、野心は高まり、恐怖は増してくる。絶対的な政権に与しないことへの対価が増すごとに、忠誠は避け難いものになってくる。与しない者は生き残れない。皆、現状の構造に寄り添おうとする。ある者は恥じらいながら、ある者は“勝てば官軍”の理屈で、しかも熱狂的にやるのである。

原則もへったくれもない、正義などどうでも良い、友情も残らない。こういう時代における、人格を葬り去られた者たちの集団墓地は、長い年月を経てから明るみに出るのだ。

こういった体制の時代に、個人の生活であるとかプライバシーなどと言うものはない。国家の利益、民族の利益、そして今や(何と悲しいことに)“民主主義”の利益を前にして、個人の自由やプライバシーなどは瑣末なことになってしまう。

既に、ある大臣が「隠していることがなければ、なんで盗聴を恐れるのか?」といったようなことを語り、実際にそう思っている社会で、私たちは暮らしているのである。

そう思っているのは、その大臣ばかりではない。私は多くの人たちから同様のことを聞いている。あまつさえ、昨年、私も出演したテレビ番組で、ある法律家の口から、それを聞いたのである。他に何があろうか・・・。

もう一度繰り返そう、「圧政は必ずしも制服組によってもたらされない」。

そして、もう一度、思い起こしてもらいたい。圧政は行き詰まりの道である。生贄に満たされることはない、最後のそして最も大きな生贄は、その所有者になるだろう。

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原文
http://www.radikal.com.tr/Default.aspx?aType=RadikalYazarYazisi&ArticleID=964696&Yazar=NURAY MERT&Date=18.11.2009&CategoryID=98

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