【216】クルドの問題は“大地主制の問題”なのか?【ラディカル紙】【2009.09.16】

9月16日付けのラディカル紙より、オラル・チャルシュラル氏のコラム。チャルシュラル氏は、クルド人地域における伝統的な社会が、長年続いた紛争によって変革を遂げたと論じてます。

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ステレオタイプで考えるのは実に容易い。例えば、「全ての出来事が米国のプランによるものだ。トルコの為政者は米国の言いなりである。この地域で何が起ころうと、その背後には米国がいる。全て米国の所為で起こっているに違いない」と明らかにすることもできる。この場合、出来事の詳細を調べたり、その推移を追ったり、そこから何かを読み取ったりする必要はない。紋切り型で全てを自動的に説明できる。そして、このように考えるのであれば、何が事実であるかは重要じゃなくなるだろう。自分の考えた事実に満足してしまうからだ。

ステレオタイプの考えは人を楽にさせる。しかし、これで事実を知ることは出来ない。そうやって想像の世界で暮らし続けた場合、いざ厳しい現実に直面した時は狼狽してしまうだろう。

米国が多くのことをコントロールしきれていないのは、アフガニスタンやイラクでの、政治的、軍事的な失敗を見れば明らかである。

こういったステレオタイプの一つに、クルド問題に関する思い込みがある。「これは大地主制の問題だ。クルド人の後進性やその問題の原因となっているのは、大地主という封建領主たちに他ならない」という思い込みである。このような評価を下す者の多くは、ディヤルバクルやハッキャーリを一度も訪れたことがないか、あるいは、この20〜25年の間に訪れたことがないのだろう。訪れたとしても、その思い込みによって得られた印象で評価を下しているに違いない。

この20〜25年の間に、南東部は大きな変化を遂げた。散発的に続いた戦闘が、この地方をひっくり返したのである。閉鎖的な生活を送っていたクルド人たちは、紛争の真っ只中に放り出されてしまった。

青年や娘たちがゲリラに加わり、村は焼かれ、なぎ倒され、女は亭主を失い、子供たちは父と兄弟をなくした。死と隣り合わせの生活状況に陥った。伝統的な部族社会は散り散りになり、人々は政府側と反政府に分別されて、各々と政府との関係が明らかになって行った。

政府側に立つことを強いられた人々は、民兵の頭領たちによって組織され、頭領たちが政府から任じられた新しい封建領主となったのである。

政府に協力しなかった人々は、悲惨な状況へ追いやられ、伝統的な社会における関係は壊されてしまい、大地主や部族の長はヘゲモニーを失った。こうして、クルド人は、革命的な変化を遂げ、ルネッサンスを迎える。女性たちはこの変化の最も象徴的な姿として表舞台へ現れた。

政府は、“鳥も飛ばないし、キャラバンも通らない”と言われたこの地域をコントロール下へ置く為に道路や電気を整備し、クルド人にも近代化のプロセスが訪れたのである。

近年におけるトルコの経済発展も、クルドの人々が遂げた変化に重要な役割を演じたと言えるだろう。経済の発展は彼らが暮らす地域にも及んだ。また、北イラクのクルディスタンから得た影響も大きい。この地域への投資と事業、そして、クルド語で教育を行う大学は、クルド人の変化に見られたもう一つの様相だろう。

“クルドの封建領主”についても、正しく理解する必要がある。クルドの民族的な行動の中で、彼らはいつも指導者としての役割を担い、その為、大きな弾圧を受けてきた。

共和国の樹立以降、数え切れないくらい実施された“強制移住”の対象とされた人々の筆頭に、この“クルドの封建領主”たちがいる。なぜなら、政府は彼らをクルド問題における主要な危険の一つと看做していたからだ。

民族問題には、階級的な問題という側面もあるが、基本的には階級問題ではない。抑圧された民族は、領主、ブルジョワ、労働者、男と女が皆一緒になって共通の要求を掲げて来る。それはアイデンティティーの要求であると要約することもできるだろう。

言語、文化、歴史は、彼ら共通の不安、そして、要求となって表に現れる。労働者も領主も、同様に自分たちの言語を守り、生かしたいと望んでいる。民俗文化を守るために反発を見せるのである。

クルドの問題は、ステレオタイプによる“大地主制の問題”ではない、アイデンティティーの問題である。この地域の経済的な立ち遅れは、大地主制をある程度守っていたが、キャピタリズムは既にここでも支配的となった。クルド人が民族的な要求を掲げて現れた背景にある大きな要因の一つがこれである。

ベディルハンオウル、ジェミルオウル、エンサリオウル、フラットといったクルドの一族たちは、共和国の歴史の中で、常に強制移住や弾圧、拷問にさらされてきたが、これらの一族の一部は、クルドの近代化でも一定の役割を演じたのである。

ステレオタイプのフィルターを通さずに見れば、クルドの問題は大地主制の問題からとっくに抜け出ている。

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原文
http://www.radikal.com.tr/Default.aspx?aType=RadikalYazarYazisi&ArticleID=954689&Yazar=ORAL CALI?LAR&Date=16.09.2009&CategoryID=98

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