【190】どのくらい深いのか?【ミリエト紙】【2008.07.30】

7月28日付けのミリエト紙より、ジャン・デュンダル氏のコラム。エルゲネコンという組織が政府転覆を目的に扇動的な活動を行なったとされる事件の訴訟について論じています。

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6ヵ月前、事情聴取の為に呼び出されたイスタンブールの裁判所で、“エルゲネコン検事”ゼケリヤ・オズ、ジェラル・カズダールと共に執筆した“エルゲネコン”(イムゲ出版―1997年)について訊かれた。

「10年前、組織の名称、関係を調べ上げたのに、何故、続けなかったのか?」。暗に他のことを仄めかしたかったのだろう。私は炭鉱夫のように答えた。「降りれる地点まで深く降りたと思っていた」。

告訴状が発表されたので、今度は同じ問いを私が訊いても良いだろう。「検察は充分に降りたのか?」。

比較できるよう、私たちの著書について、いくつか明らかにしたい。私たちは何を書いたのだろうか?

・組織はヨーロッパで冷戦の時代にCIAの支持によりNATOの中で形作られた。

・本来、左派の台頭を妨げる目的で作られ、ナチの残党ファシストやマフィアを実行者として利用した。

・扇動的な活動によりカオスを生じさせてクーデターを誘発しようとした。

・ルーツは「3月12日事件」(訳注:1971年の軍事介入)に遡り、その当時に“エルゲネコン”と名付けられた。

・内部に、将校や公安関係者、大学教授、ジャーナリスト、実業家が存在した。

・「9月12日事件」(訳注:1980年の軍事クーデター)の前、MIT(国家情報機構)と参謀本部に属する特殊部隊司令部の中で組織された。

・クーデターに向かう過程で、「3月16日の虐殺」(訳注:1978年にイスタンブール大学で7人の学生が死亡した事件)に始まり、未解明の殺人事件に至るまで、多くの流血事件に関わった。

・「9月12日事件」以前はASALA(アルメニア解放秘密軍)に対し、「9月12日事件」以降はPKK(クルド労働者党)に対して用いられた。

・当時の首相の合図により、(ヴェリ・キュチュックの担当地域で)20人近いクルド人実業家が殺された事件を請け負った。

・給与は、詐欺的な手法で行なわれた入札によって支払われた。

・次第に目的を超えて私有化され、当時の首相によって作られた“特別オフィス”内の“マフィアのボス、部族の長、警察幹部”を通して、テロとの闘いを名目に政権をコントロールしようとした。

・ウール・ムムジュ氏(訳注:ジャーナリスト)は、テロ組織と国家の関係を解き明かそうとしながら、“オジャラン(訳注:PKKの首領)とコントラゲリラ(訳注:コントラゲリラのトルコ・バージョンと看做されていた)の協力関係”を疑い始めた矢先に殺された。

・オザル氏狙撃事件を調べていた検事は、狙撃者が“ダズクル(訳注:アフィヨンカラヒサル県)のコントラゲリラのメンバー”であることを突き止めたものの、MIT(国家情報機構)の関係者から警告を受けて調査を中止した。

・組織は、ススルルックで起きた交通事故によって明るみに出た。

・ヨーロッパで“グラディオ”が明るみに出た後、順番がトルコに回ってきた。

私たちは、これを証人と資料に基づいて書いた。

この本は公開されている。この本には何が足りなかったのだろう? “組織の中の左派・・・” そのことも後の記事で明らかにしている。

サバンジュ氏暗殺の実行犯ドゥヤルが殺された時、「これは国家組織の中の一派がやらせたものだ。清算が図られた。我々に解決させたのだ」という声を聴いた。ドゥヤルが話す前に、カラギュムリュックという徒党をアフィヨンの刑務所へ送った官僚を問質し、こう書いたのである。「ドゥヤルが話せば、全て右派だと思っていた組織の左派の手が見えていただろう」(1999年2月20日)

10年前のこの情報と今日の告訴状を比較して何が見えるだろうか? 上記の主張の多くを肯定するデータ・・・。違いは何処にあるか?

検察はこの巨大な組織について、「ブロンドの髪を持った移民風、きつい性格、等々・・・」というリーダー像を示している。名前は明らかにされていない。しかし、「組織にMIT(国家情報機構)やトルコ軍との関係はない」と言うのである。

思うに、こうして全ての過去を帳消しにしているようだ。組織は「9月12日事件」以前の生まれた場所や頭脳からではなく、末梢神経から捉まれている。

告訴状は、組織の歴史的、機構的、国際的なルーツではなく、日常的な事件や電話の与太話、信頼性の疑わしい証人や資料に基づき、背後の見えない、曖昧で不充分な図を描いている。

さらに重要なことは、― そして正に不都合な点は ― 訴訟が根本的な浄化ではなく、よくある薄っぺらな政治的清算の印象を帯びていることだ。

その為、非常に必要とされる世論の支持もなくなり始めている。

こういった差し障りにも拘わらず、トルコの将来ばかりか我々の青春も汚してしまった組織の名を冠するこの訴訟を私は重要に考えている。告訴状を不充分と思ったものの、興奮と共に読んだことを明らかにしたい。

では、“深層国家”(訳注:国家を陰で支配しているとされる勢力)と言われる存在が、この告訴状に記されている組織なのか?

確かなことは言えない。しかし、私は次第に、もともとこの清算を始めたのが深層国家ではないのかと思い始めている。

検事に会ったら尋ねてみたい。「組織の名称、関係を調べ上げたのに、何故、深く降りなかったのか?」。

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原文

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