【175】トルコ航空のカウンターで起こった喧嘩【ザマン紙】【2007.09.05】

9月4日付けのザマン紙よりエリフ・シャファック氏のコラム。女流作家のエリフ・シャファック氏は、国外の空港で目撃したトルコ人同士の諍いを描写しながら、トルコの人々の心内に潜むものへ迫ろうとしています。

****

我々は感情的な国民である。これを西欧の観察者が口にすることは歓迎されないが、内輪なら楽に書き記し語り合うことができる。我々は感情的であり、それはかなりなものだ。直ぐに苛立ち、いとも簡単に喧嘩する。声を張り上げることぐらい朝飯前だ。こういった特色は、地中海的と説明することができるかもしれない。しかし、他の地中海諸国には見られない特色が我々にはある。お互い相手に、文明の何たるかを教えようとすることだ。お互いを、“文明的な人たち”と“非文明的な人たち”に別けようとする。

以下は、国外のある空港でトルコ航空のフライトを前にして並んでいた時に起きた実際の出来事である。どの国の空港であるかは敢えて言わない。解らなくても話の本筋には影響がないし、そこに居合わせた3〜5名のトルコ航空職員を難しい立場へ追い込みたくはないからだ。

そこでは三つのカウンターがトルコ航空の為に割り当てられていた。三つとも長い長い行列が出来ている。トルコを見に行こうというツーリスト、ヨーロッパに居住する二重国籍の移民、旅行を終え帰国の途上にあるイスタンブールの人々とその子供たち・・・。なかなかコスモポリタンな人込みである。

私たちがそこへ到着した時には、三つの行列とも全く前へ進まない状態になっていた。三つの行列の先頭に陣取っているのは、偶然のことながら全て女性である。一様に都会で暮らしている教育のある中年女性といったところだ。一人はトルコ航空の職員と、後の二人はお互いの間で喧嘩している。喧嘩だなんて大袈裟なことを言うと思わないで欲しい。正しく喧嘩である。殴り合ったりしないよう仲へ割って入る人もいた。侮辱や叱責の言葉が次から次へと続く。行列の後で待っていた私たちは、たちまち喧嘩の見物人となってしまった。尋ねてみたところ、これほどの騒動の原因がささいな行き違いであることが解った。ビジネスクラスの為に別途のカウンターが開設されておらず、ビジネスクラスの旅客が行列の前に出ようとしたことから言い争いになったらしい。誰かが誰かのことを怒鳴り、次は誰かがと言ってる内に、山火事のように広まってしまったのだろう。

私が興味を覚えたのは、この後の部分だ。ビジネスクラスの旅客である女性は、行列の前に出る権利のあることを説明してから、こう怒鳴りつけたのである。「あなた、誰と争っているか解っているの? あなたらは文明の何たるかを知らないのよ!」。こちらも言い返す、「奥さん、文明は金で決まるもんじゃありませんよ。文明の何たるかを知らないのはあなたの方です」。この時、行列の後方で私の横に立っていたスカーフを被っている旅客がその亭主へ言うことには、「私たち前の方にいなくて良かったわね。私たちがいたら、“スカーフを被っているのは文明を知らない”って言い出すわよ」。

そんなやり取りが続く中、前方の隅に立っていた3人目の女性は、トルコ航空の職員を叱責する。「あなた方の所為でこんなことになったのよ。行列の中にいるヨーロッパの人たちの前で恥をかかされたじゃない。ツーリストに来てもらいたいって、こんな喧嘩している国へツーリストが来るの?」。トルコ航空の職員もそれに答えて、「あなた方が国民として順番を待つこと知らなければ、トルコ航空にいったい何をしろと言うのですか?」。

こういった展開をニヤニヤ笑いながら、まるで楽しそうに見物している何人かの学生も行列の中にいた。黒いTシャツを着て、ピアスを付けている。この青年たちの一人が笑いながらもう一人の方へ向き直り、「西欧の人たちはトルコの女性が虐げられていると思ってるそうだけれど、これを見てもらいたいね。喧嘩するのはいつもあの連中だよ」。

もしも、この場面を止めて、全ての登場人物と台詞により、巻き戻して何度も何度も観ることができたならと思う。国民がお互いに懐いている先入観や最もデリケートな点を知ろうとするならば、トルコ航空の行列に並んで、似たような喧嘩を見物するだけで充分だ。女も男も、酷く感情的で腹を立て易いところや、アイデンティティーの衝突、ありとあらゆる誤解、“ヨーロッパ”との終わりを知らない論争、自らを暴き立てること・・・、全ての手掛かりを得ることができるだろう。

****

原文
http://www.zaman.com.tr/webapp-tr/yazar.do?yazino=583904


▲トップページ
▲前の記事
▲次の記事
▲トルコの新聞記事INDEX