【171】AKPは何故選挙に勝てるのか?【ラディカル紙】【2007.07.09】

7月8日付けのラディカル紙日曜版にフアト・ケイマン氏が寄稿した記事。コチ大学教授のケイマン氏が、トルコの社会でAKP(公正発展党)が支持されている要因を分析しています。

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DYP(正道党)−ANAP(祖国党)による合同の試みが政治的な貧困のレベルで失敗に終ったことは、ANAP(祖国党)とその党首がトルコの政治史から姿を消し、DP(民主党)と名を変えたDYP(正道党)とその党首も、10%の得票率を越さなければ議席が与えられないというシステムに引っ掛かって、選挙の後に同様の道を辿ることを示している。一方で、この失敗は次のことを意味する。今日、トルコにおける中道右派の唯一の政党はAKP(公正発展党)であり、この認識は、7月22日の選挙以降、学術的な議論および公の議論の中で、あるいは社会の様々な領域で広がりを見せ深まって行くだろう。トルコはこの選挙により、中道右派の担い手とその政治的な思想を見出し創造することになる。

中道右派の姿勢を明確にする“自由市場経済の原則”と“道徳的な価値”を繋ぎ合わせようとする政治スタイルによりAKPは、この選挙と選挙の結果手にする得票率でもって、その思想・構造・“社会における認識”をイスラム守旧派の政治スタイルへ還元することが不可能な“中道右派政党”の立場を踏み固め、中道右派唯一の、そして最も強力な政党であることを社会に知らしめるだろう。

最近行なわれた様々な世論調査の結果を見るならば、AKPは第一党となるばかりでなく、その35〜40%の得票率により、議会で過半数を押さえて政権を取る為に必要な305〜315の議席を獲得するであろうことが明らかである。言い換えれば、この先2週間の内に、トルコを震撼させるような重大で恐ろしい事件が起こらない限り、7月23日の朝には、新たなAKP政権へと向かうトルコを見ることになるだろう。

おそらくAKPは、大統領の選出に必要な367議席を確保することが出来ず、この選挙の後に続く大統領選で他の政党と折り合いをつけなければならなくなる。しかし、これが、近年最大の非常事態、体制の危機/政治的な混沌の中で行なわれる総選挙におけるAKPの成功に影を落とすことはない。

ところで、この2年間、特に2007年に入ってから:
(a)CHP(共和人民党)、MHP(民族主義行動党)、DYP(正道党)、ANAP(祖国党)、DSP(民主左派党)、青年党、自由党、労働者党や他の野党、そして軍部と司法のような国家機構から発せられている“体制とテロに関する問題”への強い非難の声、さらに大学を始めとする民間の機関により組織されたデモ集会で常に叫ばれていた同様の強い非難の声にも拘わらず・・・
(b)親愛なるフラント・ディンクが暗殺されることにより政治的な話題の中心に上がり、マラティアの惨劇でその続きを見た“政治テロ”にも拘わらず・・・
(c)PKKの攻撃で殺害された兵士の葬儀と、この葬儀が明らかに反AKP政権という構図で政治化されたにも拘わらず・・・
(d)最近、少なくとも二度に亘って話題に上った“軍部が政府へ向けて発したEメール通告”にも拘わらず・・・
(e)北イラク問題に関連して、選挙の雰囲気および討論が“テロと越境作戦”へ集中し、これによって政府が批判されたにも拘わらず・・・

AKPが、7月22日の選挙で第一党となる、或いはそれに留まらず議会の過半数を押さえる得票率に達する可能性をどのように説明できるのか?

もしも、上記に登場する人々が絶えず主張しているように、AKPがトルコの政教分離主義体制にとって最も危険な存在であり、国の安定を乱すテロ問題の解決において最も重要な障害であれば、その恐怖の中で行なわれる7月22日の選挙で、如何にして第一党となり単独政権を可能とする得票率に達することができるのだろうか?

今日、体制とテロに関する安全保障思想を掲げて国家集権の政治スタイルを見せる人々が一致団結して非難しているAKP、このように非難にさらされているAKPが、様々な世論調査の結果によれば、選挙で成功する可能性が高いことを何と考えたら良いのだろうか?

この疑問にどのような回答を与えるのか? これは非常に重要な問題である。何故なら、与えられる回答は、選挙後トルコが何処へ向かおうとしているのか、どのような政治的空気、議論へ入って行くのかを明らかにするからだ。もしも、この疑問への回答が“国家と社会の対立”であり、例えば、国家に対立する社会が、未教育で誤った階級意識を持ち、正しいことを理解できない集団であるとすれば、もしくは、国家を全体として権威的なものであると見做し、この権威に対抗して不当な扱いを受けている社会の美徳を称えるのであれば、それはいずれにしても間違いである。

AKPが、様々な所から、“体制とテロに関する問題”で強く非難されているにも拘わらず、7月22日の選挙で手にする可能性が高いと見られている成功は、国家と社会の対立というより、各々が関係し合っている次の二つの要因に基づいている。

先ず第一の要因は、“体制とテロに関する問題”でAKPが非難されることにより、安全保障と同じくらい重要な他の各問題が見えなくなってしまうことだ。これらは、経済発展、特に貧困、失業、健康と教育が含まれる人間らしい発展に関わる問題であり、民主化と経済発展が交差し合った継続的な経済発展という領域である。この領域を、現在はAKPとその“社会への奉仕”という戦略が満たしている。2002〜2007年に亘るAKP政権の時代に、経済的な問題での批判を行なわず、継続的な経済発展に関してAKPより有効な政策を主張することもなく、貧困と失業に対する闘いや教育と健康の分野でも政策を立案できなかったCHPを始めとする政党が、この選挙で不成功に終ることは、我々に次の事実を示している。政権を取ろうとする政党は、テロと闘うばかりでなく、継続的な経済発展のビジョンを持たなければならない。こういったビジョンを持たない政党は、テロとの闘いでも人間性を否定し、単に国家集権的な言葉を発している。この為に、AKPはCHPを始めとする他の政党に比して、特に経済の分野で選挙への準備が整い、より装備された政党のように見える。そして、経済運営力を主張できる唯一の政党という認識が社会の中で生まれ広がりつつある。

ここで第二の要因が明らかにされる。非常事態の中で選挙を迎えながら、“体制とテロに関する問題”で重大な非難を受けているAKPは、選挙への準備が最も整った政党として“テロとの闘い−経済成長”を基本に構成した選挙戦略と、その過程で党へ招き入れた人材により、中道右派唯一の強力な政党であることを社会に示している。ところが、中道左派のポジションにいなければならないCHPが、2002〜2007年のAKP政権時代でもそうであったように、7月22日の選挙過程においても、“影響力のある社会的な対抗”を実現できないことが、AKPの成功に重要な役割を果たしている。

これを敷衍するならば:
(@)選挙への準備が整っているAKPに対し、CHPは大統領選挙とテロ問題でAKPを非難するだけで、選挙への準備が整っていないように見える。
(A)CHPは、特に継続的な経済発展において、AKPより優れた公正な社会的政策を全く持っていないように見える。
(B)最も重要なのは、CHPが社会の中で、分けても民主化の分野において、民族的な反発を基にして行動する“民主主義から遠ざかった政党”のイメージを持たれていることだ。
(C)そして最後に、経済政策やビジョンに乏しく、“体制とテロに関する問題”でAKPを非難するCHPは、質の高い公正な統治・運営を主張する政党としてではなく、第二党に甘んじるか、もしくはMHP(民族主義行動党)との連立によって政権を取る可能性を模索せざるを得ない政党として、自らを社会に示している。

これにより、選挙においてCHPは、AKPに対して異なるビジョンを示すことができない、AKPより良い統治・運営を主張することができない、そして、中道左派のポジションを放り出して、反発的な民族主義のポジションに着く戦略を採ったかのように行動している。この意味で、CHPは徐々に現実政党としての性質を失い、イデオロギー政党へ向かっているように見える。イデオロギー政党が選挙に勝つことは有り得ない。

7月22日の選挙を、トルコは非常事態の中で迎える。それにも拘わらず、社会の知性は、テロとの闘いと継続的な経済発展を共に考え、相互に関連付けようとする政党を望んでいる。その意志を理解しているAKPは、自らを中道右派唯一の強力な政党と位置づけている。これに対し、社会的な知性を代表して、テロとの闘いと継続的な経済発展の関係を民主化の中で活かしながら、越境作戦の代わりに、社会的な平和と共存の基盤を、国民の権利、自由と責任に求めるべき左派のエリアは、今のところ空っぽである。バスクン・オランを始めとする何人かの無所属候補たちが、出来る限りこのエリアを満たし、発言して行こうと努力している。空っぽの中道左派は、人材を求めているが、この状態が続く限り、選挙をものにするのはAKPである。

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原文
http://www.radikal.com.tr/ek_haber.php?ek=r2&haberno=7216


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