【168】トルコにおける権力闘争【ザマン紙】【2007.05.23】

5月19日付けのザマン紙よりシャーヒン・アルパイ氏のコラム。アルパイ氏は、現在トルコにおいて、“民主主義の定着”と“官僚による庇護体制の継続”をめぐる権力闘争が繰り広げられていると論じています。

****

アンカラとイスタンブールで“共和国”の市民集会が催された直後に、ヨーロッパにおける著名紙の記者が私のところを訪れ、以下のように問うた。「トルコで、何と説き明かして良いのか解らないパラドックスに直面している。生活スタイルや服装の面から見て、モダンで西欧的な人々が、民主主義のプロセスに軍部が介入することを望み、西欧に対する怒りを露わにしている。一方、生活スタイルや服装の面から見ると、あまりモダンで西欧的と言えない人々は、軍部が政治へ介入することを望まずに西欧化を支持している。イスラム主義者と言われているAKP(公正発展党)が、EU加盟を目指して重要な政治的・経済的改革に主導的な役割を果たし、政教分離主義者と言われているCHP(共和人民党)は、トルコを西欧から遠ざけようとしている。このパラドックスをどのように説き明かせるのか?」。

これに対する私の回答は次のように要約できる。

トルコにおいて、生活スタイルや服装の面から見てモダンで西欧的な人々の多くは、トルコの独特なイスラム主義運動をルーツとするAKP政権を恐れている。トルコの大都市や沿岸部に集中し、一種の文化的な少数派を形成しているとも言えるこの人々の内で、特に女性たちは、AKPが政権の基盤を固めた場合、人々の生活スタイルや服装に介入し、伝統的でイスラム的な規範を押し付けて来るのではないかと心配している。この為、国家が宗教を監督し宗教的な自由に制限をもたらす政策や、軍部の軍事介入により漸進的に定着した“官僚の庇護による体制”が継続することを望んでいる。

また、トルコにおける最大の宗教的マイノリティーと言えるアレヴィー派の人々も同様の恐れを抱いている。アレヴィー派の人々は、自分たちのことを“主流のスンニー派による支配”から守ってくれていると信じて来た為、アレヴィー派のことを認めていない公式アイデンティティーや政教分離の政策に対し、1990年代になってからやっと抗議の声を上げ始めたくらいだが、このアレヴィー派の人々も、彼らが“スンニー派の党”と見ているAKPが一層力を得ることに疑念を抱いているのである。

アンカラ、イスタンブール、イズミルで、国家体制の庇護を背後に受けながら広場を埋め尽くした数多の人々は、基本的にこの二つ流れから成り立っている。

AKP政権が今日まで、政教分離に関する法律へ一切の変更を行なわなかったことも、彼らの恐れを消し去る為に充分ではなかった。彼らは、AKPに隠された意図があり、官僚の庇護体制を終らせることが出来た暁には、トルコをイランのようにしてしまうのではないかと信じているのである。

イスラム主義運動における進化とAKP政権が実施してきたことを見るならば、この恐れは現実とそれほど関連がないかもしれない。しかしながら、この恐れは、第一野党によって煽られ利用されている。減りつつある得票率を、“宗教主義−政教分離主義”という対極構造を作ることによって回復しようとしている第一野党CHPは、この展開の中で徐々に後退し、ついには1930年代の民族主義・国家主義的なものを拠り所にしようとしている。

軍部と官僚たちも、部分的にはイデオロギーにより、つまり公式アイデンティティーと政教分離政策に結び付けられている為、一方では庇護体制の中で維持して来た特権を守る為に、この恐れを扇動している。

要するに、これは外見上“文化的な衝突”であるけれど、裏では政治的な権力争いが行なわれているのである。

1980年代以降、トルコでは、統制経済から市場経済への移行、経済における海外への門戸開放、国全体への教育の普及が見られ、その結果として大きい社会経済的な変化が起きている。

アナトリア(訳注:ここでは保守的な内陸部地方といった意味で使われていると思います)の事業家たちや専門職を身につけた人々は、段々と経済的に強くなり、中央政権からの配当を望むようになった。AKPが基本的に、台頭するアナトリア・ブルジョワジーを代表していることは疑いのないところだ。EU加盟のプロセスを利用して、官僚の庇護体制から脱することを望んでいるAKPは、この権力闘争の中で、民主主義と政教分離主義的な性質を徐々に高めてきた。

要約すれば、トルコで現在繰り広げられている権力闘争は、AKP−CHPの争い以上に、“民主主義が定着するのか?”あるいは“官僚の庇護体制が継続するのか?”という焦点に絞られてきている。この上で最近まで、EU加盟のプロセスは、民主主義の定着を強力に支援してきたのであるが、残念ながら、メルケル−サルコジのファクターは、EUのトルコにおけるソフト・パワーをゼロにしてしまった。

****

原文
http://www.zaman.com.tr/webapp-tr/yazar.do?yazino=541500

▲トップページ
▲前の記事
▲次の記事
▲トルコの新聞記事INDEX