【154】コーランと科学【ミリエト紙】【2006.06.10】

6月10日付けのミリエト紙よりタハ・アクヨル氏のコラム。“イスラムに改宗しトルコ人となったドイツ人物理学者”という触れ込みでイスラムとトルコを賞賛した記事を書くなどして一儲けしたイカサマ師の事件を例にあげながら、コーランと科学との関係を明らかにしています。

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その名をハンス・ヴァン・アイベルという。スカンジナビア系のドイツ人で理論物理学者。フライブルク及びコペンハーゲン大学で“宇宙学”を修めた。アメリカのNASAで専門研究員として働いたこともある。

コスモロジーに興味があった為、コーランを研究し、コーランに近代科学理論の糸口が多く示されていることを知るや、“ムスリム、そしてトルコ人になる”道を選んだと自分のホームページで明らかにした。

そして、“全てコーランが目指すものに基づいた”科学理論を発展させる。世界は彼を賞賛し、“衛星ロケット、天文物理、原子物理の分野でそれぞれ国際的な賞”が与えられた。とかなんとか・・・。

先日、警察はこの男を逮捕した。何故かと言えば、彼が語っていたことは全て嘘だったからである。おまけに、その虚言によって純真な人々を騙し、莫大な富を得ていたらしい。
1987年だったと思う。当時、私はテルジュマン紙の編集長を務めていた。社の信頼できる記者が、この“ハンス・ヴァン・アイベル”と会ったそうである。トルコ語を後から習得したドイツ人のように話し、金髪であるところからして正にドイツ人のようだったという。任命を受け近々イスタンブール大学の理学部で講義を受け持つと言い、証明書類も見せて、テルジュマン紙で“科学とイスラム”という週一の連載を書きたいと希望した。
私は書類も見たので信用し、紙面に予告文を掲載させた。“ムスリムのドイツ人物理学者アイベル氏の筆による・・・”。

朝、故アイハン・ソンガル教授から電話が掛かって来る。「おい、あの男はイカサマ師で嘘ばかりだよ」。

調べて見ると、実際何から何まで嘘だった。髪と眉を金色に染め、口元を歪めてドイツ人のように話すイカサマ師。直ぐ翌日の紙面で釈明し読者にお詫びした。

あれから20年が過ぎたのに、また同じ嘘! あの時も“ハンス・・・”という名を使っていた。“イスラムに改宗しトルコ人となったドイツ人物理学者”と言い、同じ理屈の出鱈目を並べていたのである。

ここでは、たった一つの事件よりも、その使われた原理の方が重要である。宗教に関すること、あるいは占いのように宗教とは無関係のことでもそうだが、“隠された学理”というものは多くの人たちの関心を引き寄せる。そして、イカサマ師たちに富をもたらす。

西欧で“オカルティズム”と言われているものだ。

これは、神学とも近代科学とも全く関係がない。

このイカサマ師は、例えば、丹念に“暗号解読”をやって見せる。コーラン、もしくは他のテキストに現れる文字や数字から、“隠された意味”を導き出す。これは、宗教や科学とは関係のない、せいぜい“アート”と呼べるようなやり方である。しかし、“不可解”という魅力に満ちている。

その“やり方”は、これまた一つの事件よりも重要なことである。コーランには、暗号として隠された、特定の人たちにより、あるいは“オカルト”的な方法により、明らかにされる秘密の意味などない!

科学と宗教上の方法により、その時代ごとの知的情報に従ってコーランは解釈される。これは全く別の問題である。コーランは太陽と月の動きについて語っているが、かつてはこれをプトレマイオスの理論に従い“天動説”と解釈していた。今日の神学者は近代天文学の観点から解釈している。これはノーマルなことだ。もとになる知的情報に従って解釈が変わるのは当然であるばかりか必要なことでもある。

コーランは、物理や化学、経済、政治の書ではないように、“隠された学理”の書でもない。顕現されたものである。我々を惑わすイデオロギーやオカルト的な魔力に気をつけなければならない。

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原文
http://www.milliyet.com.tr/2006/06/10/yazar/akyol.html


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