【136】レバノンからの撤退を明らかにしたシリアのアサド大統領【サバー紙】【2005.04.11】

4月8日付けのサバー紙よりアリ・クルジャ氏のコラム。クルジャ氏は、7日と8日の二日間に亘って、サバー紙のコラムに、アサド大統領へのインタビューを掲載していますが、ここでは8日の分だけを訳しました。

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セゼル大統領の来訪を心待ちにしているシリアのアサド大統領へのインタビュー。二日目は、ハリリ暗殺、シリア軍のレバノン撤退、シリアから見たトルコについて、お話を伺った。

Q:レバノンにおける1万4千の兵員をいつ撤退させるのですか? この件については、保証を望んでいると仰っていましたが、その保証とは、いったい何のことですか? 国連の安保理は「即時撤退」と言ってますが。

A:先ず、私たちは如何なる保証も望んではいません。そもそも、こういった国際関係の中では如何なる保証についても語ることなどできないのです。しかし、安保理の1559号の決議は、国連の基本協定に反しています。例えば、決議を前後してレバノンの状況を比較すると、決議後、かえって不安定になってしまったことが解るでしょう。通常、安保理は状況を安定させる為にあるはずです。とはいえ、私たちは、それにも関わらず国連の決定に敬意を表しています。なぜなら、未だに、私たちのような弱小国は、こういった機関を必要としているからです。時として、その決定が不公正な場合もありますが。重要なのは、この機関がスーパー・パワーの利益に奉仕する状態へ陥ってはならないということです。そして、この為に私たちは、「1559号の決議を受け入れよう」と言いました。国連とシリア−レバノン共同軍事委員会が明らかにした線に従って、遅くとも4月30日までには全ての兵員がレバノンから引き上げることになるでしょう。

Q:レバノンで、ハリリ暗殺という悲劇がおきました。一部には、暗殺をシリアが主導したとして非難する声もあれば、背後にイスラエルがあると指摘する人たちもいます。シリアやイスラエルが暗殺に関わるような理屈はあるんでしょうか?

A:私たちがハリリを暗殺しなければならない理由は何処にもありません。こういった殺人事件について考える場合、もっとも自然なのは、結果として誰が損害を被り、誰が利益を得たのか考えてみることです。ここでもっとも利益を得たのは、シリアとレバノンの善意を望まない者たちでしょう。これには多くの国を想定できるけれど、確実な証拠もないまま、公式に私がその国の名を上げることはできません。ただ、繰り返しますが、これによりシリアとレバノンは損害を被っています。シリアは、地域的且つ国際的に損害を受けました。しかも、シリアは一人の友人を失ったのです。ハリリ首相は、いつもレバノンにおけるシリアの存在を支持していました。ハリリは愛国者でありアラブ民族主義者でした。タイフ協定を支持し、この協定を結んだ当事者でもあります。この協定は、レバノンにおけるシリアの兵力を法的に認めたものです。シリアは、この協定に従って、内戦を停止させる為にレバノンへ派兵し、内戦は終りました。仮に、時として、レバノンの一部の人たちと意見が合わなかったとしても、それはごく普通なことでしょう。

Q:イタリアの新聞におけるインタビューに答えて、米国のシリアへの介入、米国の軍事行動は避けられない状況になったと仰っていますが・・・。

A:それは正しくありません。私たちは公式にこの新聞の報道を否定しています。インタビューにおいて、記者は私に、「なぜ、イラク戦争に反対したのか?」と訊き、私は次のように答えたのです。「私たちはアメリカの計画を知っていた。一部のアメリカ人はイラクの後にシリアとイランへ向けての展開を考えていた」。これをイタリアの新聞は勝手に解釈してしまいました。貴方の質問へ答えるならば、私はそういった攻撃や占領があるとは思っていないけれど、私たちが緊張した状態にあることを隠すつもりもありません。なぜなら、アメリカのように、スーパー・パワーを持ちながらも国際法には敬意を示さない国家が脅迫しているからです。そして、他の国では、脅迫したことを実践して見せました。しかし、もう一度申し上げますが、アメリカの軍事行動があるとは思っていません。ただ、脅迫といっても色々あります。世界の政治や経済状況、テロの広がり、イラクの現状。私たちのような国は、こういったことから先ず影響を受けてしまいます。この為に緊張せざるを得ないのです。しかも、先行きは非常に不透明で、誰もが、これからどうなるのか把握できていません。

Q:アメリカは、後になって実証できなかったものの、イラクに大量破壊兵器が存在することを理由に介入しました。貴国にも、この種の兵器があると言われています。デイリー・テレグラフ紙のインタビューでは、「イスラエルがこの種の兵器を廃棄すれば、私たちも廃棄する」と仰っていますが、これは兵器の存在を認めた発言と受け取っても良いのでしょうか?

A:これも正しいものではありません。私たちは、2003年の夏、国連に対して、「中東を全ての大量破壊兵器から浄化すること」を提案しました。私たちのこの提案を欧米は支持しませんでした。なぜなら、中東で大量破壊兵器を有する唯一の国はイスラエルだからです。この地域で一つの国家にこの種の兵器があることは、当然のことながら、他の国々を緊張させ、類似した兵器を持つように仕向けています。これは終わりのない軍拡競争ということです。シリアは、大量破壊兵器の拡散を防止する国際協定にサインしました。私たちは、軍備の問題を解決することが平和を実現する為の正しい方法であると信じています。

Q:シリアから見た場合、トルコはどのように映るでしょう? 米国の忠実な同盟者ですか? ムスリムが大部分を占める政教分離の国でしょうか? ヨーロッパに向かって歩む、もしくはヨーロッパの国と映っていますか?

A:私たちにとってトルコは、質問の2番目と3番目を合わせたような感じです。一時期支配的だった1番目の定義は、既に誰も口にしなくなりました。つまり、トルコは、昔の意味でアメリカの絶対的な同盟者のようには、振舞っていません。もちろん、トルコと米国の関係はあるし、これは続きますが、同様に、トルコは他の国々とも関係を結ぶことになるでしょう。私たちは、こういった全ての関係を肯定的に見ています。なぜなら、私たちとトルコには、とてもポジティブな関係があるからです。トルコが他の国々と良い関係にあることは、シリアにとっても有益なことです。

Q:トルコがEUへ加盟することは、貴方たちへどのような影響を与えますか? 貴方たちにとって、エキサイティングな話題と言えますか?

A:そうです。私はいつもヨーロッパの人たちへ、トルコとEUの関係が如何に重要なものであるか説明してきました。これは、単にトルコの為だけではなく、シリアにとっても重要です。トルコがEUへ加盟すれば、私たちもEUの隣国になれるからです。さらに、加盟交渉はトルコの発展に貢献する為、隣国である私たちも、これから利益を得ることができます。私たちとトルコの通商・経済関係は発展を続けており、これも自然にシリアの社会へ反映することでしょう。

加盟交渉には、他にも重要な面があります。ヨーロッパで一部の人たちはEUがキリスト教徒の集まりであると考えています。これは、ヨーロッパばかりでなく、世界平和の為にも危険なことです。特に、911以降、多くの人たちが「文明の衝突」について語り始めました。クリスチャンとムスリムの戦争について勝手なことを言う人たちもいます。だからこそ、ムスリムの国として、トルコがEUへ加盟することは非常に重要です。私もヨーロッパの指導者たちに、いつもこの重要性を説明しています。

また、この為に、ヨーロッパの人たちはトルコに対して、難しい条件をつけているのでしょう。トルコがこの条件を全てクリアーすれば、ヨーロッパには反対する理由がなくなります。トルコのEU加盟は、全てのヨーロッパにとって有益なことです。今、トルコの加盟に反対している人たちは、その時が来れば、何も言うことが出来ずに、困難な状況へ陥ることでしょう。私たちもシリアとして、トルコの発展を見守っています。

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▼【115】シリア大統領ベシャル・アサド氏へのインタビュー
http://www.neo-pro.jp/makoto/shinbun/honbun/00115.html

▼【120】トルコとアメリカ、そしてアラブ諸国
http://www.neo-pro.jp/makoto/shinbun/honbun/00120.html

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