【118】大学生によるアラベスク・コンサート【ラディカル紙】【2005.03.07】

3月4日付けのラディカル紙より、デメット・ビルゲ・エルギュン記者のレポート。日本の演歌を思わせるアラベスクは、知識人から低俗歌謡の烙印を押され、場所によっては一時期禁止されていたこともあります。しかし、先日、知識人の卵が学ぶサバンジュ大学では、学生たちによるアラベスクのコンサートが開かれた模様です。

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今までこっそりとアラベスクを聴いたりしたことはないだろうか? さもなければ、レコード屋の前を通り過ぎる時、耳にした「♪沈んでしまえ! こんな世界♪」に思わず拍子を取ってしまったことは・・・。そして、本当はアラベスクが好きなのに、低俗の烙印を押されたくないが為に、これを小さな秘密として隠していたのでは・・・。

サバンジュ大学の学生たちが昨晩催したコンサートは、この小さな秘密をさらけ出して見せた。「告白する、私たちはこの歌が好きなんだ!」というスローガンのもとに開催されたコンサートでは、かつて多くの場所で禁止され、ポップスが隆盛となった後も除け者にされ続けたアラベスクが、オーケストラの伴奏により、ポップス風やロック風にアレンジされることなく歌われた。

サバンジュ大学のミュージック・クラブの学生たちが開催したコンサートは、そのポスターも一風変わったものだった。唐辛子を音符に見たてたポスターには、「カセットを買うことが躊躇われ、レコード屋の前で立ち止まりながら聴いた歌。『誰かポップスの歌手がリメークしてくれれば、ゆっくりと聴けるものを・・・』と言い、周りに誰もいないことを確かめてからリズムを取った歌」という文句が記されている。

コンサートの開催を知らせる広報では、学生たちのアラベスクに対する思いが次のようにまとめられていた。「辛く悲しい日々に咲いた薔薇の花、記されることのなかった歴史、やるせない流浪の詩。告白する、私たちはこの詩が好きなんだ」。

サバンジュ大学のトゥズラ・キャンパスにおける会場は、先ず、この日のゲストであるオルハン・ゲンジェバイ(訳注:アラベスクの大御所的な歌手・作曲家)の入場によって沸きかえり、ゲンジェバイが手を広げて挨拶すると大きな拍手がこれに応えた。そして、照明が落とされコンサートが始まる。4人組のボーカル・グループが舞台に上がり、ゲスト奏者として弦楽器の名手ユスフ・タネルが姿を現し、その後にゲンジェバイが続いた。ゲンジェバイはとても感激したことを明らかにし、学生たちに感謝した。

続いて、独唱する歌い手が舞台にあがる。この大学で文化活動プログラムを学んだケマル・アルスランが先ず歌ったのは、オルハン・ゲンジェバイの「♪沈んでしまえ! こんな世界♪」だった。これを歌い終えるや、彼は次のようなメッセージを伝えた。「去年の今頃、トルコでは一つの慣例が覆されました。3月1日、イラク侵攻における対米協力が否決されたのです。この歌は平和の為に世に出ました」。

ムストゥム・ギュルセスの「♪世界が逆に回ろうとも諦めない♪」に続き、イブラヒム・タットゥルセスの「♪たった一つの願い。幸せならばそれで良い♪」が歌われると、来場者たちも両手を上に掲げて歌に興じ、「♪友よ、僕は一人ぼっちなんだ♪」では、ライターも掲げられた。

サバンジュ大学で自然科学を学ぶ一回生のチャウルハン・ウトゥクは、コンサートに興じたことを明かしながら、次のように語る。「僕らの大学の雰囲気を考えれば、アラベスクが好きな人はそんなにいないはずなんだけれど、多分、僕らの血の中に流れているんですね。コンサートが開かれたら皆来ましたよ」。

会場にはサバンジュ大学ばかりでなく、他の大学から駆けつけた学生たちもいた。ジェラフパシャ大学の4回生であるバハル・テミズは、いつもはロックを聴いていると前置きして、「アラベスク・ファンではないが、オルハン・ゲンジェバイのことは好きです。とてもクォリティーの高いものだし、ルーツに根ざしています」と言う。サバンジュ大学の経済大学院で学ぶエメル・ヤルンジュは、コンサートを観に来た理由を次のように説明している。「私はポップスの方が好きなんですが、私たちの心にはアラベスクがあるんでしょう。皆、アナトリアの各地方からやって来ました。私はトラブゾンからです。皆好きなんですね。ただ、ファンタジー・ミュージック(訳注:トルコの人たちはやたらとジャンル分けするのが好きで、これはアラベスクとポップスの中間に位置するものだそうです。代表的な歌手はマフスン・クルムズギュルなんだとか。)とアラベスクを混同してはいけません。アラベスクはルーツを持つ音楽です」。

ゲンジェバイからサインをもらうことに成功したサバンジュ大学芸術学部一回生ケメル・イエルリカヤは、感想を次のように述べる。「僕は他の学生たちのように、アラベスクが好きなことを隠していたわけではありません。アラベスクは僕らの中で脈打っています。メタル・ミュージックには抵抗があるんですよ。彼らも同じことを言ってますね」。

コンサートの途中で、オルハン・ゲンジェバイから意見を聞くと、「アマチュア精神の高貴さが私を感激させました」と述べ、こういった歌が一時期禁止されていたことを若者たちは知らないのではないかと言う。

この夜、彼らなりの解釈で歌われたアラベスクを楽しみながら聴くことができた。忘れられない思い出となるだろう。

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