【104】クルド人政治家へのインタビュー【ミリエト紙】【2004.12.22】

12月20日付けのミリエト紙より、デルヤ・サザック氏のコラム。1970年代の末、公共事業相であった時に、自らをクルド人と認める発言をして罷免され、後に投獄された経験を持つシェラフェッティン・エルチ氏に、サザック氏がインタビューしています。インタビューは、ブリュッセルにおけるEU決議の前に行われたようです。

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<シェラフェッティン・エルチ氏のプロフィール>
1938年、ジズレ県(訳注:南東部、イラクとの国境に接している)に生まれる。アンカラ大学法学部卒。1959年の「49人の裁判」ではエルチ氏の家族も起訴された。ジズレ県で弁護士を開業。1971年、ディヤルバクルの刑務所に8ヶ月間服役。1977年、マルディン県からAP(公正党)の国会議員として当選。1978年、APを離れ、エジェビット政権の公共事業相に就任。1980年代に30ヶ月間刑務所に服役。クルド文化研究協会に続き、1997年に創設したDKP(民主大衆党)は、憲法裁判所によって閉鎖された。

Q:ブリュッセルにおけるEUの決議を前にして、トルコのクルド人たちは何を望んでいるのですか? 宣言文は激しい議論を巻き起こしました。レイラ・ザナとDEP(訳注:クルド人政党)の元国会議員たちも署名した宣言は、クルド人の間でも論争になっています。署名した人たちのメッセージはどういうものでしょうか?

A:クルド人は一つの民族にあってしかるべき権利を要求している。オスマン帝国の時代、クルド人は、自治地域の形で自らを統治していた。共和国の創設を宣言した文書と言える「1919年10月22日のアマスヤ議定書」には、クルド人にあらゆるエスニック及び社会的な権利が与えられると明記されている。この文書には、ムスタファ・ケマル(訳注:アタトュルク)と当時のオスマン政府を代表してナズル・サーリヒ・パシャの署名もある。クルド人は1920年に開かれた初の国会へ、クルディスタン選出の議員として参加した。しかし、ローザンヌ条約が締結され国家体制が整うと、トルコ共和国はクルド人の存在を全く否定する政策を進めるようになる。クルド人はこれを承服せず、国家との間に齟齬をきたし始めた。先のPKKの活動は、28回目の抵抗とされている。

EUは皆にとって一つのチャンスだ。撃ち合って争わずに、ノーマルな文明社会に見られるような対話により、民主的な規則の中で問題を解決することがEU加盟交渉の過程において可能になるのではないかと希望をもっている。

Q:撃ち合って解決できなかったから、対話で解決しようと、これが宣言文の趣旨ですか?

A:いや、撃ち合って解決できなかったからということではない。PKKが武力闘争に打って出た期間でさえ、撃ち合いを是としないクルド人が大半を占めていた。私もその一人である。

Q:PKKには反対していたのですね?

A:もちろんだ。その為に我々は、軌道を異にする別の政党を作った。それが民主大衆党(DKP)であり、私はその当時も暴力には反対していた。既に独立国家を造る必要も殆どない。なぜなら、国々が集まり、統治権において譲歩しながらEUを構成しようとしているからだ。

Q:連邦制を支持していますね?

A:支持している。トルコでは皆が連邦制を国家の分裂と捉えているが、連邦制度は国家を分裂させるものではない。連邦制国家は、国際法及び憲法の面から見ても一つの国家である。

Q:クルド人は何を望んでいるのですか? 別れることですか?

A:それは絶対に違う。あらゆる社会に、マージナルなグループというものが存在しているかもしれないが、クルド人の多くはトルコから離れたいとは思っていない。あまつさえ、EUに加盟しようというトルコから離れることは理知的な考えとは言えない。そもそもあの宣言文でも、「クルド問題は、トルコの政治的な統一の中で平和裏に解決されるべきだ」と呼びかけている。

Q:宣言文の中の「トルコがキプロスのトルコ人に与えられるよう要求している権利と同等のものをクルド人にも保証すること」という要望は非常に反発を招きました。キプロスに準えたのは何故ですか?

A:クルド人は一つの民族であり、自らの運命を決定できる権利を持っている。これは必ずしも独立することを必要としない。キプロスのトルコ人に与えられるよう望まれているものがあれば、クルド人にもその権利が与えられるべきだ。宗教、言語、人種の違いは国の統一を妨げない。これが近代的な考え方である。1920〜30年にかけて世界を支配した思想、人々を同じ釜の中へ入れて溶かし一つの民族的アイデンティティーと文化を創り出すというモデルは現代に通用しない。

Q:バスクン・オランによる「マイノリティー・レポート」も議論を呼びましたが(訳注:トルコ人という概念の代わりに「トルコに住む人」という概念が提案されていました)、「トルコ共和国」という呼称は、クルド人にも受け入れられるものですか?

A:一つの民族的なアイデンティティーを、国民のアイデンティティーにしてしまうことが問題だ。トルコ(トュルキエ)とは、一つの地名であり国である。トルコ人(トュルク)ではなく、「トルコに住む人」(トュルキエリ)という概念が、より正しい規定だろう。

Q:これを貴方は支持していますか?

A:もちろん支持している。一つの原則に基づいて、アイデンティティーと国民が規定されれば、それが最も正しい解決だ。

Q:トルコ共和国(トュルキエ・ジュムフリエティ)の国民となることでクルド人は何を失ってしまうのですか?

A:何も失わない。

Q:不愉快じゃありませんか?

A:クルド人は、これをそれほど不愉快とは感じていない。トルコ共和国の国民になることでクルド人は不愉快にならないが、クルド人はトルコ人ではなく、自らをトルコ人であるとは思っていない。

Q:クルド民族主義を余り前面に打ち出すことは、トルコ民族主義を煽ることになりませんか?

A:トルコはオスマン帝国の遺産を引き継いだ国家である。オスマン帝国は多様な民衆の集まりを内包していた。この多様性はトルコ共和国にも反映している。トルコ共和国は、単にトルコ人から成り立っている国家ではない。それにも拘らず、クルド人には、クルドとしてのアイデンティティーによる権利が何も与えられていない。我々にも言語がある。クルド語による教育が認められなければ、クルド人に対して平等であるとは言えない。

Q:HADEP−DEHAP(訳注:クルド人政党)のような政党が、選挙で10%の規制枠(訳注:トルコの選挙では10%以上の得票率がなければ議席を確保できません)を超えられないのは何故でしょうか? 1,400万近くのクルド人口があると言われていますが、3〜4百万の票を得ることがそれほど難しいのですか? 地域的、民族的なアイデンティティーに基づく政治活動が、トルコの政党と言える状態になっていないからですか?

A:こういった政党は、そのイデオロギーやメンバー、実施している政策により、クルド人の多くを引き付ける構造になっていない。DEHAPが規制枠を超えられないからと言って、それはクルド人がクルド人としてのアイデンティティーを持っていないという意味にはならない。今、国家の側に付いているクルド人民兵(訳注:反政府武装組織PKKと戦闘を繰り広げていました)のところか、あるいはPKKではない者たちのところへ行けば、彼らはこういうだろう。「私はクルド人だ。しかし、PKKではない」。これはまた別の問題だ。EU加盟交渉の過程で、トルコは、政党と選挙に関する法律を改正するよう求められるだろう。

Q:クルド人はどのような憲法の変更を望んでいるのですか?

A:平等なパートナーという立場を望んでいる。「トルコ共和国はトルコ人とクルド人から成り立っている」と明らかにすることが、クルド人の要求だ。我々はこの国の主要な構成要素である。これを憲法に明記しなければならない。EUへ加盟する際、トルコは思考方式を変える必要がある。加盟交渉の過程で新たに色々と提案されるだろう。トルコは、「我々は独立国であり、それは国内の問題である」というように抵抗する権利を持っていない。

Q:EUはトルコに連邦制を求めることができるんでしょうか? 憲法に変更できない条文はあるんでしょうか?

A:もちろん求めることができる。トルコへ、「見なさい。このように異なる集団がある。国の境界を乱さないまま自治権を求めている」と言うだろう。クルド人も「我々が多数を占めている地域を自ら統治したい」と要求する。この場合、必ずしも連邦制であることが条件とはならない。連邦制に至るまでの移行期を考えることもできる。例えば自治州のような。

Q:クルド人は何故国外の力に頼ろうとするのですか? 力を自分たちの社会、国から得なければならないのではありませんか?

A:もしも、クルド人が充分に自由な雰囲気の中で、自分たちの問題を明らかにして解決のためのフォームを作ることができないのであれば、当然、必要な時に外国からの支援を受けることになる。クルド人が支援を仰いできたのは非合法な組織ではない。トルコがいつも門を叩いていたEUなのである。トルコにおける全ての問題はそこで話し合われるだろう。腹を立てる必要などは何処にもない。

Q:政府はかなり強く反発しましたね。

A:宣言文を公表するのは誰もが持っている権利である。これを裏切りと見たり、レイラ・ザナを尋問したりするのは間違っている。EUへ加盟しようとしながら、EUの組織へ訴え出た人たちを裁こうとしているわけだが、そういう考え方でEUへ加盟することはできない。単に経済的な利益のためにEUへ加盟するわけではない。政治、法律、道徳における価値もあるのだ。

Q:クルドの問題はどのように解決されると思いますか?

A:クルドの問題はトルコで解決されるべきだ。問題を話し合うことが認められれば、政治的な基盤が構成される。クルド人は自らのアイデンティティーに基づいて政党を作ることができるだろう。対話により健全な解決へ向かうはずだ。今求められているのは、公のルートにより、民主的な方法でクルド人が組織を作ろうとする権利を認めることである。

Q:北イラクのバルザーニに近い政党が準備されている言われていますが?

A:それは根拠のない捏造だと思う。なぜなら、モーラ・バルザーニと息子メスットの伝統的な政治手法は、自分たちの地域外のクルド人に干渉しないことだからだ。我々の間に民族的な繋がりはあるが、そのように整然とした形で政党を作ることに前向きな人たちがいるとは全く考えていない。

Q:地域における米国の役割は何ですか? クルド人たちは喜んでいますか?

A:米国の存在はクルド人たちにとって大きな支えだ。一つの保証と言っても良い。米国は、「北イラクに、そしてクルド人に何処かが介入しようとすることは許さない」と言っている。これにはトルコやイランも含まれている。これはクルド人たちにとって、重要なチャンスだ。

Q:フィクレット・バシュカヤによれば、「パラダイムは破綻した。EU加盟の過程でパラダイムの変更が求められる」ということですが、どうでしょうか?

A:全くその通りだ。1920〜30年だったらともかく、今はもう使えない。

Q:いつも政府の役割が焦点になっていますが、クルド人の政治運動に方向を与えるだけの影響力を持っている貴方たちにも、「武力闘争や暴力と思想的な活動の間に明確な一線を引く」という使命があるとはお考えになりませんか?

A:休むまもなく申し上げているが、この問題の解決で、最も重大な役割はクルド人に与えられている。クルド人がトルコ人と共に暮らしたいと思っているのであれば、トルコ人たちを安心させなければならない。私は、1997年に政党を創設した。そこで、「国家の現在の領域を尊重し、暴力に反対する」と申し上げたのに、5ヶ月後、閉鎖するための裁判を起こされてしまった。

Q:レイラ・ザナと彼女の仲間たちは何をしようとしているのですか? 宣言の後は政党を作るんでしょうか?

A:「レイラ・ザナとその仲間たち」と言われているが、署名したのは、レイラ・ザナの仲間たちではない。ザナが署名したからと言って、他の者も署名したわけではないのである。レイラ・ザナは署名者の一人に過ぎず、あの企画は彼女のものではない。

Q:その企画とは、政党を作ることなんですか?

A:いいや違う。私はあの宣言が政党を作るためのものだとは思っていない。全て部外者がクルド人の名において話していたから、クルド人は何を考えているのか明らかにすべきだと考えたのだ。こうして、EUの議題の中で、トルコにおけるクルド人の状態が注意を引くようになり、国外での反響はもっと大きかった。

Q:クルド人の活動に関して、近い将来、どのような動きがあると思いますか? というのも、非常にたくさんのグループに分かれています。オジャランは未だ影響力を持っているかの如く見せようとしているけれど、PKK(KONGRA−GEL)にかつての勢力はありません。

A:PKKとは関係のないクルド人の中で、異なる新しい政治運動へ向かうための真摯な動きがあるものの、これは未だ成熟した段階にはほど遠い。

トルコには未だ自由な政治を行う基盤がない。なぜなら、国家が憲法に明らかな一線を設けているからだ。「政党はアタトュルク原則に従わなければならない」と言う。これは一つの制限ではないのか? 政党は、暴力に訴えない限り、あらゆる考えを主張することができる。民衆を信用していない国家が、民主化に向かうことができるのか?

以前、参謀総長閣下は、「内部の脅威は未だ存在している」と言ったが、「内部の脅威」とは何なのか? 国家にとって国民は脅威なのか?

Q:この国は、PKKの為に内戦を経験しました。軍部が神経質になるのは当然じゃありませんか?

A:もちろん、如何なる国家も明らかな犯罪に対して目をつぶることはできない。これには誰も抗議していない。しかし、この犯罪を防ぐことを理由に、思想に対して障害を設けることはできない。現在では、テロとの戦いにおいても、その考え方が変わって来ている。もしも、あるテロ行為が社会の一部から支持を得ているのであれば、これを防ぐためには、彼らが何故その組織を支持しているのか調べて解決を図らなければならない。クルドに関しては、28回もの抵抗運動があった。一つが終れば、また次が始まる。国家が今まで実施してきたクルド対策はトルコへ損害を与えた。クルド人にとっては悲惨なことだった。

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